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継続的出願のダブルパテント拒絶に関する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決

(In re: Janssen Biotech, Inc. (Federal Circuit, January 23, 2018))

2018年1月23日付で、連邦巡回控訴裁判所(以下CAFC)により、継続的出願のダブルパテント拒絶に関する判決が出されました。

判決の要点

 自明性タイプのダブルパテントの原理は、第1特許のクレームと特許的に差異の無い第2特許のクレームを登録させないことにより、特許存続期間の実質的な延長を防止するものである。米国特許法121条は、分割出願に対して原出願に基づく特許を引例として用いることを禁止しており、自明性タイプのダブルパテントの拒絶理由から分割出願を保護する「宥恕規定(safe-harbor provision)」を提供する。本判決においてCAFCは、継続出願および一部継続出願に基づき登録された特許は特許法121条の宥恕規定の対象にはならないと判示した。CAFCはまた、特許権者が再審査またはリイシューの手続きにおいて当該出願を分割出願であると再指定することにより、当該特許を遡及的に特許法121条の宥恕規定の適用対象とすることはできないと判示した。

判決の内容

1.背景

 Janssen Biotech, Inc.(以下“Janssen”)は、免疫学的抗体に関する多数の特許出願の権利化手続きを数年の期間にわたり続けた。各出願間の関係は以下の図に要約される。

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出願番号08/013,413(“413出願”)において審査官は限定要求を発行した。Janssenは限定要求に応答することなく413出願を放棄し、出願番号08/192,093(“093出願”)および出願番号08/192,102(“102出願”)を出願した。両出願とも、出願番号08/010,406(“406出願”)の内容を取り込んで一部継続出願として出願された。093出願において予備補正、選択指令、選択応答を経た後、審査官は、出願番号08/324,799(“799出願”)に基づく自明性タイプのダブルパテントを理由として、093特許に対する暫定的な拒絶理由を通知した。その後、Janssenは更なる補正を行うとともに、413出願での限定要求により093出願における自明性タイプのダブルパテント拒絶が排除されることを主張し、当該主張は受け入れられた。

 

 数年後、USPTOは、093出願に基づき登録された米国特許第6,284,471号(“471特許”)の再審査を開始した。この再審査手続きにおいて、Janssenは、413出願に開示されない内容に関する明細書中の記載を削除し、406出願への出願日の利益の主張を取り下げ、413出願の分割として093出願を再指定することを請求した。これらの請求にも関わらず、審査官は、102出願および799出願に基づいて登録された特許に基づく自明性タイプのダブルパテントを理由として、093出願を拒絶した。この拒絶理由は、その後、特許審判部によって支持された。

2.判決

 米国特許法121条は分割出願に対して原出願に基づく特許を引例として用いることを禁止するものであり、自明性タイプのダブルパテントの拒絶理由から分割出願を保護する規定である。CAFCへの控訴において、Janssenは、471特許の登録クレームは093出願中の新たに追加した内容に基づいておらず、分割出願としてではなく一部継続出願として093出願を出願したことにより何らの利益も享受しなかったのであり、471特許は特許法121条の宥恕規定の保護を受けるべきであると主張した。CAFCは、たとえ当該出願が一部継続出願として出願されていた時期においてJanssenが何らの利益も享受しなかったとしても、特許法121条の文言に基づけば、Janssenが一部継続出願を分割出願に変更する補正により宥恕規定の恩恵を得ることができるようになる理由がないと指摘し、Janssenの主張を退けた。CAFCは、これまでの複数の判例では特許法121条の文言通りの厳格な適用が要求されており、文言通りの宥恕規定は分割出願およびそれに基づき登録された特許のみを保護する、との見解を示した。CAFCは、問題となっている特許が特許法121条に基づく宥恕規定の保護を受けるためには、当該出願が特許登録される時点までに分割出願として適切に指定されていることが必要である、と判示した。

 

 以上に基づき、CAFCは、自明性タイプのダブルパテントの理由に基づき471特許の特許性を否定した審判部による拒絶を支持した。

 本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC米国特許弁護士 Herman Paris
米国特許弁護士 有馬 佑輔
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