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米国特許法271条(a)に基づく直接侵害に関する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)大法廷判決

 去る8月13日、米国特許法271条(a)に基づく直接侵害に関する、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)大法廷判決が出されました。以下にその概要をご紹介致します。
 今回のCAFC大法廷では、クレームされた方法が、複数の当事者によって実施された際に、単一の主体に対して直接侵害が成立するかが争われ、CAFC大法廷は、1)単一の主体による指示或いはコントロール、及び2)複数の当事者によって成り立つ共同事業、の2つの状況において直接侵害が成立するとの見解を示しました。

背景

 2006年にAkamai社が自社の所有する米国特許番号6,108,703(以下703特許)をLimelight社が侵害したとしてマサチューセッツ地裁に訴えを起こしていた。上記703特許はコンテンツデリバリネットワークを通じて電子データを送信する方法に関する特許であり、コンテンツプロバイダーのウェブサイトの構成要素をAkamai社のサーバーに記憶させ、それらのサーバーにユーザーがアクセスする技術である。
 Limelight社はコンテンツデリバリネットワークを通じて上記703特許の幾つかのステップを実行していた。しかし、上記703特許は、ユーザーのウェブサイト上の構成要素を“tagging”及び “serving”するステップを必要とするが、Limelight社のサービスにおいては、Limelight社ではなくカスタマー自身がコンテンツの“tagging”及び “serving”を行っていた。

本CAFC大法廷判決の概要

 Limelight社による直接侵害を認めなかった地裁判決を覆し、CAFC大法廷は米国特許法271条(a)に基づく直接侵害の基準を以下のように明確化した:

A.米国特許法271条(a)に基づく直接侵害は、クレームされた方法の全てのステップが、単一の主体によって実行される、或いは起因するときに成立する
B.複数の当事者が上記ステップに関与した場合、ある当事者の行為が他の当事者の行為に起因する形態が、単一の主体がその直接侵害の責を負う結果となる形態か否かを、裁判所は判断しなければいけない
C.以下の2つの状況において、他の当事者の行為の責を単一の主体が負う:1)単一の主体による「指示或いはコントロール」、及び2)複数の当事者によって成り立つ共同事業、
D.上記「指示或いはコントロール」は、直接侵害の被疑者が1)代理人を通して、或いは他者との契約によって、クレームされた方法の一つ以上のステップを実行した場合、或いは2)クレームされた方法のステップの実施を条件として、行為への参加や利益の享受を認める、及びその行為の方法やタイミングを決めている場合に、成立する
E.共同事業となる為には以下の4つの要件を満たすことが求められる:1)グループの当事者同士の明示的或いは黙示的な契約、2)グループによって実行される共通の目的、3)当事者間の、共通の目的における金銭的利益の同一性、4)平等な支配権につながる、事業の方向性に関する平等な発言権

 上記の基準を設けると共に、CAFC大法廷は、特許法271条(a)に基づく複数の当事者による直接侵害は、主たる者と代理人の関係(“principal-agent relationship”)、契約関係(“contractual arrangements”)、共同事業(“joint enterprises”)に限定されるとの、先のCAFC判決を覆した。
 CAFC大法廷は、クレームされた方法のステップを複数の他の当事者が実施した場合の責を、単一の主体が負うことになる他のシナリオが将来発生する可能性がある、との見解を示した。
 CAFC大法廷は、Limelight社がカスタマー全員に、Limelight社のサービスを受けるためにカスタマー自身が実施しなくてはいけない“tagging”及び “serving”ステップについて記載している契約に署名させていること、に言及している。CAFC大法廷は、これらの証拠が、Limelight社が、カスタマーの“tagging”及び “serving”ステップの実施を条件として、Limelight社のコンテンツデリバリネットワークの使用を認めていたこと、を証明する実質的な証拠となる、との判示をした。
 更に、CAFC大法廷は、カスタマーとLimelight社との契約が締結された後、Limelight社はカスタマーに対してレターを送り、“tagging”ステップを含んだLimelight社のサービスの使用方法を説明し、Limelight社のサービスは、カスタマーが“tagging”ステップを実行しなければ利用できない、と記載していることに言及した。CAFC大法廷は、これらの証拠が、Limelight社がカスタマーの行為の方法やタイミングを決めている、との実質的証拠となるとの判示をした。
 このように、CAFC大法廷は、クレームされた全てのステップがLimelight社によって実施或いは起因するとの陪審員の評決をサポートする実質的証拠が認められ、Limelight社は米国特許法271条(a)に基づく直接侵害の責を負うべき、との判示をした。

 本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
同 米国パテントエージェント 有馬 佑輔
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