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特許法条約(PLT:Patent Law Treaty)等に基づく米国特許規則改正に関して
2013年10月21日付けで、特許法条約(PLT:Patent Law Treaty)と特許法条約実施法(Patent Law Treaties Implementation Act of 2012)に基づいた米国特許規則改正に関する連邦公報が発行されました。
規則改正の主なポイントとしては
1. 出願日確保の為の要件
2. 放棄された出願の復活と期限後の年金の受領
3. 失効した外国優先権及び米国仮出願の権利の復活
4. 出願日或いはPCT国内移行日から8ヶ月以内に審査が開始できる状態でない出願(not in condition for examination)に対して特許期間調整(Patent Term Adjustment)を削減すること4. 出願日或いはPCT国内移行日から8ヶ月以内に審査が開始できる状態でない出願(not in condition for examination)に対して特許期間調整(Patent Term Adjustment)を削減すること
が挙げられます。
本規則改正は2013年12月18日に施行されます。
1.出願日確保の要件
改正後の米国特許規則1.53(b):
デザイン特許出願及び仮出願、以外の出願に対する出願日は、クレームの有無に係わらず、少なくとも明細書を米国特許商標庁に提出することで与えられる。尚、デザイン特許出願に対する出願日確保の為には従前通りにクレームが必要である。
改正前の規則においても、仮出願の出願日確保の為にクレームは要求されていなかったが、改正後の米国特許規則1.53(c)においても、仮出願の出願日は、クレームの有無に係わらず、少なくとも明細書を米国特許商標庁に提出することで与えられる、と記載されている。
改正後の米国特許規則1.53(f):
クレームの無い非仮出願を提出した場合、出願人にはその旨が通知され、規則1.16(f)に規定される追加料金と共にクレームを提出する為の期限が与えられる。期限内にクレーム提出及び追加料金支払いをしない場合は放棄と見做される。
改正後の米国特許規則1.57(a):
出願データシートにおける過去に提出した出願に対する参照によって、出願と出願中の図面が該過去に提出した出願によって置き換えられる旨を示し、該過去の出願を、出願番号、出願日、及び知的財産の管轄局或いは出願国によって特定した場合、改正後の米国特許規則1.53(b)に基づく出願日確保の為の出願明細書及び図面の要件を満たすことが出来る。
上記のように該過去の出願に対する参照によって出願された場合、該過去の出願明細書及び図面のコピー、過去の出願の英文翻訳及び規則1.17(i)に規定される料金(非英語出願の場合のみ)、規則1.16(f)に規定される追加料金を、提出する為の期限が特許庁から出願人に通知される。
2.放棄された出願の復活と期限後の年金の受領
特許法にセクション27を追加する補正をする。その結果、出願人や特許権者によるペティションにより、意図せず放棄となった出願を復活し、意図せず期限を過ぎた場合の登録料を受領し、意図せず期限を過ぎた場合の再審査における応答書を受領する、ことに関する手続きを特許庁長官が定めることができる。
これに伴い、「意図しない遅延」とは異なる「避けられない遅延」を規定していた規則1.137(a)が改正され、避けられない遅延に基づくペティションに関する条項は削除される。一方で、出願人や特許権者による応答が、意図せず遅延した場合、規則1.137に基づくペティションにより、放棄された出願や規則1.550(d),1.957(b)或いは1.957(c)に基づき終了した再審査の復活が可能となった。
3.失効した外国出願及び米国仮出願に基づく優先権の復活
改正後の米国特許規則1.55:
12ヶ月(デザイン出願の場合は6ヶ月)の外国優先権の期限の満了後であって、該外国優先権の期限満了後から2ヶ月以内に提出された出願は、遅延が意図的ではない場合にはペティションによって該外国優先権を復活させることが出来る。
尚、該ペティションは以下の要件を満たす必要がある:
・ 出願データシート中に記載される、特許法119(a)-(d)又は(f)、365(a) 或いは(b)に基づく優先権情報・ 出願データシート中に記載される、特許法119(a)-(d)又は(f)、365(a) 或いは(b)に基づく優先権情報(優先権を主張する外国出願の特定);
・ 規則1.17(m)に規定される料金;
・ 出願の遅延は意図的ではない旨の陳述書
また、規則1.78も改正され、仮出願の利益を復活させる為の方法も同様に記載されている。
4.米国出願日及びPCT国内移行日から8ヶ月以内に審査が開始できる状態でない出願に対して特許期間調整(Patent Term Adjustment)を削減
改正後の米国特許規則1.704(c)(12):
米国出願日及びPCT国内移行日から8ヶ月以内に審査が開始できる状態でない(not in condition for examination)出願に対して、規則1.703に基づく、審査遅延の為の特許期間調整が、審査開始可能な状態になるまでの日数の分だけ、削減される。
本特許期間調整の削減の目的は、上記1の改正後の規則に乗じて、クレームを持たない、或いは過去の出願を参照するのみの出願を行なった出願人が特許期間調整の利益を得ることを防ぐ為である。
以上
- 本欄の担当
- 米国オフィスIPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
同 米国パテントエージェント 有馬 佑輔