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中国特許審査指南の2017年改正(2017年4月1日より施行)
2017年3月2日に中国国家知識産権局(SIPO)は、2017年4月1日に施行される改正特許審査指南を公表しました。
今回の特許審査指南の改正ポイントは以下の通りです(下線部が改正部分)。
1.ビジネスモデルクレームの緩和(第2部第1章第4.2節第(2)号)
「ビジネスモデルに係るクレームは、ビジネスの規則及び方法の内容を含むと共に、技術的特徴を含む場合は、特許法25条により該特許権を取得する可能性を排除してはならない。」との内容が追加された。
2.媒体クレームの容認(第2部第9章第2節第1号)
「(1)クレームは、アルゴリズム若しくは数学的計算規則、コンピュータプログラム自身若しくは媒体(例えば磁気的テープ、ディスク、光学的ディスク、光磁気的ディスク、ROM、PROM、VCD、DVD又はその他のコンピュータ読み取り可能な媒体)にのみ記憶されたコンピュータプログラム自身、又はゲームの規則若しくは方法などにのみ係るものである場合は、該クレームは知的活動の規則及び方法に該当するものであり、特許の保護客体に該当しない。」(第1段落)と改正された。
また、「例えば、記録されたプログラム自身のみにより特定されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、コンピュータプログラムプロダクト、又はゲームの規則のみにより特定され、如何なる技術的特徴も含まないもの、例えば如何なる物理的な実体も含まない特徴により特定されたコンピュータゲーム装置などは、実質的に知的活動の規則及び方法にのみ係るものであるため、特許の保護客体に該当しない。」(第3段落)と改正された。
意見募集時のSIPOの解釈によると、この改正の意図は、コンピュータプログラム自身(「コンピュータプログラム自身」とは、ソースプログラムやオブジェクトプログラムなどのコード化された命令列を意味する(第2部第9章第1節第3段落))のみが特許の保護客体に該当しないことを明確化し、「媒体+コンピュータプログラムプロセス」というクレーム作成方式が認められることを明確化することである。
従って、今後、中国では、プログラム関連発明について、「ステップと、…ステップとをコンビュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」の媒体クレームが認められると考えられる。
3.プログラム関連発明の装置クレームのプログラム構成要件の容認(第2部第9章第5.2節第1段落)
「装置クレームとして記載する場合は、該装置の各構成要件及び各構成要件間の関係を具体的に記載し、該コンピュータプログラムの各機能がどの構成要件にて果たされ、如何に果たされるかについて具体的に記載しなければならない該構成要件は、ハードウェアを含んでもよいし、プログラムを含んでもよい」と改正された。
4.実験データの補充(第2部第10章第3節)
「出願日以降に補充された実施例や実験データは考慮されない出願日以降に補充された実験データは、審査官が審査すべきである。補充実験データにより証明された技術的効果は、当業者が特許出願の公開内容から得られるものでなければならない。」と改正された。
5.無効審判における訂正方式の緩和(第4部第3章第4.2節、第4.3.1節、第4.6.2節、第4.6.3節)
「該訂正原則の下で、クレームに対する訂正の具体的な方式は、一般的に、請求項の削除、併合及び技術案の削除、請求項の更なる限定、明らかな誤記の訂正に限る。…請求項の更なる限定とは、保護範囲を減縮するように、請求項に他の請求項に記載された1つ又は複数の技術的特徴を追加することを意味する。」(第4.6.2節)と改正された。
6.特許出願の包袋の閲覧の緩和(第5部第4章第5.2節第(2)、(3)号)
公開後、且つ特許査定公告前の特許出願の包袋の閲覧内容は、時間的に「公開日まで」のものから「実体審査」段階までのものに拡大され、内容上「実体審査段階において出願人に送達された通知書、検索報告及び決定書」を含むように拡大された。
特許査定公告後の特許出願の包袋の閲覧内容は、「検索報告」を含むように拡大された。
7.財産保全により中止の改正(第5部第7章第7.4.2節、第7.4.3節、第7.5.2節)
2013年1月1日に施行された民事訴訟法に合わせて、財産保全により中止の関連規定が改正された。
以上
- 本欄の担当
- 副所長 弁理士 吉田 千秋
米国特許弁護士 Herman Paris
米国オフィス IPUSA PLLC 米国特許弁護士 有馬 佑輔