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発明の一部の構成要素の輸出に関する米国最高裁判決

(Life Technologies Corp. v. Promega Corp.(Supreme Court, February 22, 2017))

 2017年2月22日付で、合衆国最高裁判所(以下、最高裁)により、発明の一部の構成要素の輸出に関する判決が出されました。

判決の要点

 米国特許法第271条(f)(1)は、ある人物が「特許発明の構成部品の全部又は主要部(all or a substantial portion of the components of a patented invention)を、・・・合衆国外で組み立てることを積極的に教唆するような態様で,合衆国において又は合衆国から供給した又は供給させた」場合、特許侵害となることを規定しています。本判決において、最高裁は、単一の構成部品の供給は米国特許法第271条(f)(1)に規定される侵害行為にはなり得ない旨を判示しました。

判決の内容

1.背景

 Promegaは、米国再発行特許RE 37,984の専用実施権者である。この特許は遺伝子検査のためのキットに関するものである。特許対象のキットは以下の5つの構成要素を含む:(1)複製対象であるDNA鎖の一部を示すプライマー混合物;(2)複製されたDNA鎖を形成するヌクレオチド;(3)Taqポリメラーゼとして知られる酵素;(4)緩衝液;(5)コントロールDNA。このキットの使用により生成されるDNAプロファイルは、法鑑定の目的のために法執行機関で使用することができ、また世界中の治療機関や研究機関で使用することができる。

 Promegaは、世界中の法執行の現場において使用することを目的としたキットの製造及び販売に関して、Life Technologiesに特許権の再実施許諾をした。Life Technologiesは、英国においてキットのうちの4つの構成要素を製造し、最後の構成要素であるTaqポリメラーゼは米国で製造され、その後、他の4つの構成要素と組み合わせるために英国に出荷された。再実施権契約の4年後、Promegaは、実施許諾対象の使用分野外である臨床及び研究現場にキットを販売することにより特許権を侵害したして、Life Technologiesを訴えた。

2.判決

 陪審審理と連邦巡回控訴裁判所への上訴の後、最高裁は、複数の構成部品からなる発明のうちの単一の構成部品を供給することは、米国特許法第271条(f)(1)に規定される侵害行為にはなり得ない旨を判示した。この結論を導くにあたり、最高裁はまず、米国特許法第271条(f)(1)の条文中にある「全部(all)」と「部(portion)」という用語が定量的意味を有するので、「主要(substantial)」という用語は、定性的な内容ではなく定量的な内容を意味すると判断した。最高裁は更に、複数形の単語“components”が使用されているので、少なくとも2つの構成部品の供給が侵害を構成するために必要であると判断した。

 最高裁はまた、米国特許法第271条(f)(1)に単一の部品の場合が該当すると解釈してしまうと、米国特許法第271条(f)(2)の必要性が殆どなくなってしまう点に言及した。この第271条(f)(2)は、「発明に関して使用するために特に作成され又は特に改造されたものであり、且つ、一般的市販品又は基本的には侵害しない使用に適した取引商品でない」単一の構成部品を供給する場合の侵害行為を規定している。

 今回の判決において、単一の構成部品を供給することは米国特許法第271条(f)(1)に規定される侵害行為を構成しないとの判断が、本事案の解決のためには充分であった。従って、今回の最高裁判決では、全ての構成部品のうちの如何なる部分が「主要部(substantial portion)」に該当するのかについては、なんら定義をしていない。

本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国特許弁護士 Herman Paris
米国オフィス IPUSA PLLC 米国特許弁護士 有馬 佑輔
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