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台湾の特許法改正 11月29日立法院で可決
2011年11月29日、台湾「専利法改正案」が、立法院において三回審議を経て可決されました。今回の台湾特許法の改正は、8年ぶりに現行法を全面的に改正するものであり、台湾特許制度の大きな変革であると言えます。
改正法は、別途行政院が定める日から施行されることになっていますが、大統領による署名後に改正法が公布された日から1年後に施行される見通しです。
今回の改正法の要点は以下の通りです。
1.新規性喪失の例外に関する適用範囲の修正及び事由の追加
6ヶ月の新規性喪失の例外期間の適用範囲について、新規性のみ適用から新規性、進歩性の両方適用に修正する(改正法第22条第2、3項)。
適用事由には、「出願人が刊行物に発表すること」が新しく規定される(改正法第22条第3項第2号)。
2.外国語出願の誤訳訂正制度の導入
(1)補正に誤訳訂正が導入される。
現行法では日本特許法第17条の2第2項に相当する条文が存在しない、即ち、原則的に外国語出願であっても誤訳訂正はできない。改正法では、外国語書面の記載に基づき補正することができるようになる。また、誤訳訂正の範囲なども新たに規定される。
(イ)補正の事由としては、誤訳の訂正が追加される(改正法第43条第2項)。
(ロ)外国語書面について補正することができない(改正法第44条第1項)。
(ハ)台湾語訳文は、出願時の外国語書面に開示された範囲を超えてはならない(改正法第44条第2項)。
(ニ)台湾語訳文の誤訳訂正は、出願時の外国語書面に開示された範囲を超えてはならない(改正法第44条第3項)。
(2)「更正」(日本の訂正審判に相当する)にも誤訳の訂正が導入され、改正法により、権利付与後にも外国語書面の記載に基づき訂正することができるようになる。
(イ)「更正」の事由として、誤訳の訂正が追加される(改正法第67条第1項第3号)。
(ロ)「更正」は、誤訳の訂正を除いて、出願時の明細書、特許請求の範囲又は図面に開示された範囲を超えてはならない(改正法第67条第2項)。
(ハ)(「更正」における)誤訳訂正は、出願時の外国語書面に開示された範囲を超えてはならない(改正法第67条第3項)。
(2)実用新案の外国語出願における誤訳訂正(改正法第106条、第110条、第120条による第43条第2項、第44条第3項、第67条の準用)。
(3)意匠の外国語出願における誤訳訂正(改正法第125条、第133条、第139条、第142条による第43条第2項、第44条第3項の準用)。
(4)外国語出願における外国語種類の限定、必要な記載事項は主務官庁により定められている(追加された改正法第145条)。
3.優先権主張効力又は特許権の回復
出願人又は権利者の故意によらず優先権主張又は特許権の効力を失った場合、優先権主張の効力又は特許権の効力を回復できるようになる(改正法第29条第4項、第52条第4項、第70条第2項)。
4.分割できる時期の追加
従来の分割可能な時期に加え、特許査定の送達があった日から30日以内にも分割することができるようになる(改正法第34条第2項第2号)。
5.自発補正の時期的制限の緩和、最後の拒絶理由制度の導入
日本特許法第17条の2第1項の規定を参考し、自発補正の時期的制限(現行法における(イ)出願日(優先日)から15ヶ月以内(現行法第49条第2項)、(ロ)実体審査を請求するとき(現行法第49条第3項第1号)、又は(ハ)出願人以外の者が実体審査を請求した場合は、実体審査を行う旨の通知書の送達日から3ヶ月以内(現行法第49条第3項第2号))を削除し、自発補正できる時期が拒絶理由通知の送達前となるよう緩和される。(改正法第43条第3項)。
日本特許法第17条の2、同条第1項第1号、同条第5項、第50条の2の規定を参考し、最後の拒絶理由(「最後通知」)制度が導入される(改正法第43条第4、5、6項)。
6.特許権の効力が及ばない範囲の追加
ドイツ特許法第11条第1号及びイギリス特許法第60条第5項(a)号を参考し、「非商業目的の未公開行為」が追加される(改正法第59条第1項第1号)。
台湾「薬事法」で定められている薬物検査登記許可又は外国での薬物販売許可(ドイツ特許法第11条第2項(b)号を参考)の取得を目的として、研究、実験及びその必要な行為が追加される(追加された改正法第60条)。
7.実用新案制度
同一の出願人により同日に出願する特許出願と実用新案登録出願の二重出願が明文化される(追加された改正法第32条)。
実用新案登録出願における明らかな新規事項の追加が方式審査の対象に追加される(改正法第112条第1項第6号)。
8.意匠制度
部分意匠制度が追加される(改正法第121条第1項)。
Icons(コンピュータ画像)とGUI(図形化ユーザインタフェース)が新たに意匠の保護対象とされる(改正法第121条第2項)。
日本の旧類似意匠に相当する「聯合意匠」(現行法第121条第2項)が廃止され、米国の同一意匠の概念及び日本の関連意匠制度を参考し、「衍生意匠」(派生意匠)が新しく規定される(追加された改正法第127条)。
日本意匠法第8条に相当する組物の意匠が新しく規定される(改正法第129条)。
以上
- 本欄の担当
- 中国弁理士 張 小珣