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Leahy-Smith America Invents Actに基づく発明者先願主義導入の最終規則及び審査ガイドラインについて

2013年2月14日にLeahy-Smith America Invents Act (AIA)の発明者先願主義を導入するための最終規則及び審査ガイドラインが官報にて公開されました。以下にその概要を紹介致します。

I.背景

Leahy-Smith America Invents Act (AIA)のセクション3に基づき、主に以下の点に関して変更がなされた:

●「先発明主義」から「発明者先願主義」への移行
●米国特許そして米国特許出願公開は、最先の有効出願日が米国内或いは米国外であるかに関係なく、最先の有効出願日(“the earliest effective filing date”)で先行技術となる
●公然使用あるいは販売が先行技術になるためには米国内の活動でなければならない、との要件を削除
●共同所有または共同開発契約に基づく特許、又は特許出願公開は、新規性そして非自明性の審査において同じ発明者(“the same inventive entity”)として扱う

上記AIAのセクション3を実施するべく、米国特許商標庁(以下”USPTO”)は2012年7月26日に規則改正案と審査ガイドライン改正案を発表していた。この改正案に対するパブリックコメントを検討した後、2013年2月14日に規則改正・審査ガイドラインの最終版が発表された。

本要旨では、規則改正やAIAに基づく特許法102条、103条に関する審査ガイドラインの重要なポイントに焦点を絞って纏めた。

II.有効出願日

規則1.109:規則1.109で規定される有効出願日は、2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明のクレームを含む、或いは過去のいずれかの時点で含んでいた、あらゆる特許出願やそれに基づく特許に対して適用される。

更に、2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明のクレームを含む、或いは過去のいずれかの時点で含んでいた、あらゆる特許出願や特許に対して、特許法120条(継続出願)、121条(分割出願)、或いは365条(c)(国際出願に基づく継続出願)に基づく参照を、含む、或いは過去のいずれかの時点で含んでいた特許出願やそれに基づく特許に対しても適用される。

従って、2013年3月16日以降に出願された非仮出願であって、2013年3月16日より前の優先権又は先の出願日の利益を主張しない出願に対してはAIAの有効出願日の基準が適用される。2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明のクレームを、2013年3月16日より前に有効出願日を有する発明のクレームを含む出願に追加した場合、当該出願中の全てのクレームとそれに続く子出願に対してAIAの有効出願日の基準が適用される。また、追加されたクレームを後で削除した場合、或いは継続、分割出願等の子出願で削除した場合であっても同様にAIAの有効出願日の基準が適用される。しかし、2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明内容を含む移行出願(”Transition Application”:下記Ⅲ参照)であるものの、2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明のクレームを含まない、或いは過去のいずれの時点でも含んでいない出願は、AIA前の出願とみなされる。

なお、2012年7月26日発表の規則案について寄せられたコメントに対し、USPTOは、「AIA前の親出願が継続しており、出願人が2013年3月16日より後の有効出願日を有する発明のクレームを含む継続出願を出願したとしても、このAIA適用の出願に対する利益を主張すること無く、且つ、2013年3月16日より後の有効出願日を有する発明のクレームを含むこと無く、元のAIA前の親出願に基づいて、継続又は分割出願をすることができる。この場合、当該継続又は分割出願は、AIA前の出願として審査されることになる」と述べている(規則改正の説明のコメント26)。

III.2013年3月16日以降に出願日を有し、2013年3月16日より前の優先権又は先の出願日の利益を主張する場合(”Transition Application”)の要件

AIAに基づく102条(b)が2013年3月16日以降に有効出願日を持つ出願に適用される為、規則1.55(j)(外国出願への優先権の主張の場合)、1.78(a)(6)(仮出願への優先権の主張の場合)、及び1.78(c)(6)(先の出願日の利益の主張の場合)が設けられた。何れの場合も取り扱いは類似しており、ここでは、外国出願への優先権の主張の場合(規則1.55(j))について説明する。この規則1.55(j)には以下のことが規定されている。

①実際の米国出願日から4ヶ月以内;
②国内移行してから4ヶ月以内;
③外国出願日から16ヶ月以内;又は
④2013年3月16日以降に有効出願日を有する発明のクレームが最初に米国出願にて提示された日

2012年7月26日の規則案発表後、クレームの有効出願日を決定する為の調査、分析を出願人側に要求することに関する懸念がパブリックコメントで寄せられ、それらパブリックコメントがUSPTOにて検討された。

この結果、規則1.55(j)に、「出願人の知る限りにおいて(”on the basis of information already known”)、非仮出願が、2013年3月16日以降の有効出願日を有する発明のクレームを有していないし、過去のいかなる時点でも有していない、として出願人が合理的に考える(”reasonably believe”)場合」、上記書面の提出は不要とする規定が設けられた。

更に、2013年3月16日以降に出願された非仮出願が、2013年3月16日より前の外国出願日の利益を主張した場合であって、2013年3月16日前の出願に開示されていない発明内容を含むが、2013年3月16日以降の有効出願日を有する発明のクレームを有さないし、過去のいかなる時点においても有していなかった場合は、上記書面の提出は不要である、とUSPTOは今回の最終規則施行にあたり述べている。

IV.有効出願日前の開示が先行技術としての適用を受けない場合に関して

規則1.130では、AIAに基づく102条(b)により、先行技術としての開示の適用(AIAに基づく102条(a))を避ける為に、出願人が提出可能な宣誓書、宣言書に関しての規則が定められている。

発明者又は共同発明者による先の開示より後になされた開示を引例として排除する場合(102条(b)(1)(B) 或いは102条(b)(2)(B))に関して、規則1.130(b)は、当該後の開示を排除する根拠となる先の開示の刊行物のコピーと共に、宣誓書、宣言書の提出を求めている。また、先の公開が刊行物の形式ではない場合、公衆に開示された内容が何であるのかを定められるように、宣誓書、宣言書にて当該内容を詳細に記載しなければならない。

2012年7月26日の規則案の発表後、上記先の開示と後の開示との間で引例排除のために必要とされる同一性の判断に関しての懸念がパブリックコメントにより寄せられ、それらパブリックコメントがUSPTOによって検討された。今回の最終版規則改正・審査ガイドラインにおいて、USPTOは、102条(b)(1)(B) 或いは102条(b)(2)(B)について開示内容の同一性が要求されるとの解釈を維持する、と述べている。但し、USPTOは、更に以下のように述べている:

・先の開示と後の開示とで、手段、媒体が同じである必要は無い;
・ 先の開示は後の開示と一語一句同じである必要は無い

また更に、USPTOは、AIAに基づく102条(b)の例外規定は、発明者又は共同発明者による先の開示によって開示される技術内容よりも一般的或いは広義な記載を含む後の開示に対しても適用される、と述べている。

上記102条(b)を実施する為の規則事項の殆どは規則1.130に記載されているが、共同所有に関する102条(b)(2)(c)と102条(c)に関する事項は規則1.104(c)(4)に記載されている。

102条(b)(2)(c)に基づき、先行技術を排除する為には、規則1.104(c)(4)で要求されているように、出願人は以下の要件を満たさなければいけない:

① 開示される技術内容とクレームの発明内容とは、クレームの有効出願日以前に同一の者によって所有されていた、或いは同一の者に譲渡する義務があった、旨の陳述書の提出;或いは

②共同研究契約が存在する場合は、

(ア) 開示される技術内容とクレームの発明内容とは、当該共同研究契約に基づく一人以上の者又は団体によってなされた、或いは当該共同研究契約に基づく一人以上の者又は団体に代わってなされ、当該共同研究契約は有効出願日以前において有効であり、クレーム発明は当該共同発明契約の範囲における活動においてなされた旨の陳述書の提出;
(イ)当該共同発明契約の一人以上の者又は団体の名前の開示が出願中に無い場合は、それを開示する為の出願書類の補正

尚、AIA以前の規則1.130(AIA以前の宣誓書の提出)は規則1.131に記載されている。

V.外国優先権主張

①特許法371条に基づく国内移行
規則1.55(c):国際出願に基づく国内移行において、優先権主張と外国出願の優先権証明書とは、PCTルールに基づいた期日までに提出しなければいけない。尚、当該優先権主張を出願データシート(ADS)によって提示する必要はないが、出願データシートにより提示することも可能である。

②特許法111条(a)に基づく米国出願
規則1.55(d):特許法111条(a)に基づく米国出願において、優先権主張は出願の実際の出願日から4ヶ月以内,又は先の外国出願の出願日から16ヶ月以内の期間の何れか遅い方までに提示しなければならない。

尚、優先権主張は出願データシート中に提示しなければいけない。規則1.55(e)では、特許法111条(a)に基づく米国出願における、特許法119条(a)-(d), (f)或いは365条(a)に基づく優先権主張が、出願データシートに上記規則1.55(d)で定める期間中に提示していない場合、当該提示していない優先権を放棄したものと見做される。
しかし、意図しない遅延によって、優先権主張が上記期間内に提示されなかった場合は、ペティションを提出することにより優先権の主張を行なうことも可能である、としている。

規則1.55(f):特許法111条(a)に基づく米国出願において、外国出願の優先権証明書は、実際の出願日から4ヶ月以内,又は先の外国出願の出願日から16ヶ月以内の期間の何れか遅い方までに提出しなければならない、としている。

尚、上記外国出願の優先権証明書が、上記期間内に提出されない場合、或いは規則1.55(h), (i)(以下をご参照)が適用されない場合、当該外国出願の優先権証明書は、妥当で十分な理由(“good and sufficient cause for the delay”)により遅延した旨を述べたペティションと共に提出されなければいけない。

規則1.55(g):119条(b)或いはPCTルール17に基づく優先権主張と優先権証明書とは、いかなる場合でも、出願の係属中及び登録前までに提出されなければならない。

優先権主張或いは優先権証明書が、登録料の納付より後に提出された場合、§1.17(i)に定められた手数料の支払いが義務付けられるが、発行される特許は訂正証明書によって訂正されない限り、優先権情報は含まれない。

規則1.55(h):規則1.55(c), (f), (g)に基づく優先権証明書の提出要件に関する例外を規定しており、USPTOに対して外国出願コピーの取寄せを許可している各外国特許庁から、外国出願コピーを取り寄せるよう、出願人がUSPTOに要求することが出来ると規定している。

規則1.55(i):規則1.55(f)に基づく期限は、出願人が外国出願の暫定コピー(”interim copy”)を規定の期限内に提出することにより満たされたとみなされる旨を、規定している。
そして、出願人は優先権証明書を出願の係属中及び登録前までに提出されなければならない。

VI.米国内の優先権主張

規則1.78(c)(2):規則1.53(d)に基づく審査手続継続出願(”continued prosecution application”)を除いて、1つ以上の、非仮出願や米国を指定した国際出願の利益を主張する、非仮出願又は米国を指定した国際出願は、夫々の先の出願に関する参照情報を含むか、含むように補正されなければならない。また、後の出願が非仮出願の場合は、先の出願の参照情報を出願データシートに記載しなければならない。また、後の出願は、先の出願に対する継続出願、分割出願、一部継続出願のうちどれに該当するかを出願の参照情報として明記しなければならない。

VII.法定発明登録制度

今回の最終規則において、USPTOは法廷発明登録の申請を規定する規則1.239‐1.297を削除した。

本件記載のFederal Registerは以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長・弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
同 パテントエージェント 有馬 佑輔

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