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リーヒ・スミス米国発明法(Leahy-Smith America Invents Act)に伴う特許付与前の第三者による 情報提供に関する最終施行規則
2012年7月18日に、リーヒ・スミス米国発明法(Leahy-Smith America Invents Act)に伴う特許付与前の第三者による情報提供に関する最終施行規則が発行されました。
この最終規則は、リーヒ・スミス米国発明法(Leahy-Smith America Invents Act)(以下「AIA」)のSection8を適用するために施行規則を改正するものです。AIAのSection8は、係属中の特許出願の審査への考慮や出願記録への取り込みの為に、第三者による、特許出願の審査に潜在的に関連性のある特許、公開された特許出願又は刊行物の米国特許庁への提供に関して規定しています。
AIAのSection8を施行するため、米国特許法第122条(e)を追加することによって、米国特許法第122条を改正しました。米国特許法第122条(e)は、対象特許出願において、特許付与前の第三者による刊行物等の米国特許庁への提出に適用される条件を示しています。米国特許法第122条(e)では、第三者による特許、公開された特許出願又は印刷された刊行物の、特許付与前の提出期限が規定されており、以下に示す(a)又は(b)のうちのいずれか早い方を提出期限としています。
(a) 米国特許法第151条に基づく許可通知の付与日又は発送日
(b) 以下(i)、(ii)のうちのいずれか遅い方
(i)米国特許庁による出願公開の6ヶ月後、又は、
(ii)クレームの拒絶を示す第一回目の拒絶理由通知の発行日。
米国特許法第122条(e)によれば、第三者による特許付与前の情報提供を行う場合、対象出願と提出する各文献の関連性を示す簡潔な説明が記載された書類、米国特許庁長官によって規定された手数料と共に、第三者による特許付与前の刊行物等の提出が米国特許法第122条(e)に準拠してなされたものであるという陳述書を提出しなければならない、と規定しています。AIAにおける第三者による特許付与前の情報提供の規定は、2012年9月16日に施行され、この規定は、2012年9月16日以前、又はそれ以降に提出されるいかなる特許出願にも適用されます。
この最終規則によって削除される現行の規則1.99では、特許、公開された特許出願又は印刷された刊行物の第三者による提出物に関する規則が規定されていますが、提出する特許文献や刊行物についてのいかなる説明も含むことができないとされていました。更に、これら刊行物等の提出期限は、出願公開日から2ヶ月以内、又は許可通知の郵送日以前、のいずれか早い方に限定されていました。
一方、新しい米国特許法第122条(e)及び規則1.290は、現行の規則1.99と同様な文献と共に、第三者がこれらの文献と対象出願との関連性を簡潔に示す説明文を提出することを許可しています。また、第三者による特許付与前の情報提供期間が現行の規則と同等か、それ以上に延期されています。従って、規則1.290に基づく第三者による特許付与前の情報提供の規定は、第三者に、潜在的に関連性のある刊行物等を特定して記載する機会をより広く提供しています。
第三者による特許付与前の情報提供は、刊行物等が紙媒体による提出であるか、専用ウェブ・ベースのインタフェース等を介する提出であるかに関わらず、自動的に電子画像包袋に記録、すなわち、出願記録に取り込まれるものではありません。その代わりに、第三者によって提出された特許付与前の提出物は、電子画像包袋に記録される前に、提出物が米国特許法第122条(e)に準拠しているか否かを米国特許庁によって審査されます。
第三者による提出物が米国特許法第122条(e)に準拠していれば、当該提出物は電子画像包袋への記録後、対象出願の次のアクションの際に審査官によって考慮されます。審査官は、IDSの一部として提出された情報と対象出願との関連性を示す簡潔な説明文を考慮する方法と同様な方法で、米国特許法第122条(e)に準拠する第三者による提出物と対象出願との関連性を示す簡潔な説明文を考慮します。また、第三者による提出物において、審査官が提出された文献とそれに伴う対象出願との関連性を示す簡潔な説明文を考慮するとは、審査官が当該文献における第三者の立場に同意するという意味ではなく、単に審査官が刊行物とそれに伴う説明文を考慮するという意味です。通常、次のオフィスアクションにおいて、審査官によって考慮されたことが示された第三者による提出物のリスト(例えば、イニシャルが付与されたフォームPTO/SB/429)が出願人に提供されます。審査官により考慮された第三者の提出物からの文献は、審査官により考慮されたIDSからの文献と同様に特許に記載されます。従いまして、出願人は対象出願において、米国特許法第122条(e)に準拠する第三者の提出物の一部として既に提出している文献を、審査官により考慮させる為に、更にIDSとして提出する必要はありません。
また、米国特許庁は、パブリックコメントを検討した結果、特許審査基準(MPEP)において定義されるように、再発行出願は、発行後の出願手続きとして扱うという立場を引き続き維持し、再発行出願において、第三者による刊行物等の情報提供を認めない旨を明らかにしました。また同様に、再審査手続きにおいても、発行後の出願手続きに相当するとして、第三者による刊行物等の情報提供は認められません。
以上
- 本欄の担当
- 副所長弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC パテントエージェント 有馬 佑輔